愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜

「もー、本当にあんたって面倒なことに巻き込むんだから」

「……ごめんね」


さっきから謝ってばかり。

瀬野がいつもと違うせいで、私までどう接したら良いのかわからなくなる。


一度瀬野と距離を取り、顔を上げてみれば、なんとも不安気な表情で私を見つめ返してきた。


「何がそんなに不安なの？」
「ううん、何でもないよ」

「その顔で大丈夫は下手くそな演技すぎなんじゃない？」


本当に下手くそ。
いつもは自分の感情を読み取らせないくせに。

もしかしてわざと弱気に見せているのではないかと思ってしまうぐらいだ。


「……俺が、ちゃんと守りきれなかったから」
「は？」

「川上さんが離れそうで」
「…不安なの？離さないって言ったくせに」

「相手にされないかもしれない」
「はぁ…本当に呆れる。何を今更弱気になってんの」


盛大にため息を吐いてやるけれど、瀬野の不安気な表情は変わらない。