愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜



「ひとりは嫌だよ、俺」

「あんたにはたくさん友達も、仲間もいるでしょ?信頼されてるんだから、ひとりになることないじゃない」

「偽ってるから」
「……え」

「明るくニコニコ笑って、周りに優しくすれば自然と人は集まるし、強い自分で在れば仲間は俺を頼る。

だからこそ弱い自分なんか見せられない…誰にも」

ここまで弱さを見せる瀬野は初めてだ。
そんな彼は私から視線を外す。

私が怪我を負ったくらいで、ここまで弱気になるだなんて本物のバカである。


「あーもう!本当に面倒くさいな」
「……ごめん」

「ほら、私の目を見て!」


両手でそっと瀬野の頬を包む。
流石の彼も驚いたようで、目を大きく見開いた。


「…川上さん?」

「今さっき私を守り抜くって言ったでしょ。
早速破る気なの?」

「……ううん、破らないよ」

「じゃあそれでいいじゃない。
どうせ離れようとしたら無理矢理捕まえるくせに」


脅しの材料だって持っているのだ、弱気になる意味がわからない。


「……強い眼差しだね」
「あんたはバカみたいに弱々しい顔してる」

「ふはっ、ひどいなぁ」


ここに来てようやく瀬野が笑みを浮かべる。
強いけれど弱い彼は、まだまだ幼い部分があるようだ。

不安定な状態が、どこか人間味らしい。

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