愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
「そうですね。
責任持って俺が川上さんを娶ります」
「せ、瀬野く…ほら、もう早く行こう?
診察していただきありがとうございました…!」
「はい、お幸せにね」
最後の最後まで不服な言い方をされてしまったけれど、変に突っかかるのをやめて病院を後にした。
「あれ、バイクじゃないの?」
瀬野に連れてこられたのは駐車場で。
そういえば病院に連れて行かれた時も、バイクではなく車だった。
「うん、ヘルメットを被ったら頭の傷が痛むかもしれないから」
「へぇ、そこまで気を遣ってくれるんだね。
でも誰の車?昨日も今日と同じ車だったの?」
さすがに無免許運転はしないだろう。
だとしたら他に誰が車を運転するのだろうか。
「昨日は悠真の家の運転手が来てくれたんだ。
でも今日は…」
「涼介、川上さん」
その時、瀬野の言葉を誰かが遮った。
聞き覚えのある声に反応すれば、以前バーで会った元総長の風雅さんの姿があった。