愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
「あっ、風雅さん。
すみません、わざわざ来てもらって」
「そりゃ来るしかないだろ。川上さんは怪我したって言うし、雷霆を倒したって言うし。まずは良くやったな、涼介」
「……俺ひとりの力じゃないです」
「でも涼介のキレる頭のおかげで倒せたんだ。仁蘭の重要な戦力を雷霆に送り込むとか、さすがの俺でも考えつかねぇよ」
どうやら瀬野の行動は、風雅さんをも驚かせていたようだ。
「それでも大事な女を守り切れないことに関しては、まだまだ甘いな」
「……わかってます」
「あ、わ、私は全然大丈夫なんで…!」
昨日の落ち込んでいた瀬野を思い出し、慌てて間に入る。
昨日みたいに弱気になられても困るのだ。
「すみません、わざわざ迎えに来てくださって…ほら、早く行くよ瀬野!」
「…うん」
風雅さん前にして、瀬野は大胆にも手を握ってくる。
こんな広い駐車場で手を繋がないで欲しいというのが正直なところ。
けれど拒否したら弱気になられるかもしれないため、ここは我慢しておく。
風雅さんは運転席に座り、私たちは後部座席に乗り込んだ。