愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜


「その子に出会って良かったな」

風雅さんの言葉を聞いて、瀬野私に視線を向けてきた。


「……何」

ついつい睨み返してしまうけれど、瀬野はそんな私を見て優しく微笑んだ。


「……俺もそう思います。
川上さんに出会えて良かったなって」

さらには手を伸ばし、私の頬を指で撫でてくる。
くすぐったい触り方だ。


「風雅さん」
「なんだ?」

「川上さんとイチャついていいですか?」
「なっ、何言って…」


いきなり何を言い出すかと思えば、そのような恥ずかしいことをよくもさらっと言えたものだ。


「ははっ、別にいいけど。
あ、でも車を汚すようなことはするなよ」

「それは当たり前じゃないですか。そもそも川上さんは純粋なんで、まだそこまで行ってないです」

「えっ、そうなのか…!?」
「……?」


またふたりが理解し難い話を始めてしまう。
まったく、先ほどから置いていかれてる感がすごいのだけれど。

「そうですよ。
川上さんのガード、固いんで」

「それは驚いたな。前に店来た時にはもうそこまで行ってるもんだと…」


「慣れてそうですよね、川上さん」


ここに来てようやく瀬野が私を見た。
かと思えば、私の体を自分の方へと引き寄せてくる。

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