愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜



風雅さんの車で暴れるのもどうかと思ったため、ここは素直に従った。


「でもキスだけで顔を真っ赤にするんです、川上さん」
「…っ!?」

な、何を言うんだこいつ。
恥ずかしいことを口にしないで欲しい。


「へぇ、そりゃかわいいな。
ギャップってやつか」

「そうですね、何回キスしても慣れないんですよ。
毎回真っ赤にして…」

「そ、それ以上言わないで!」


慌てて瀬野の口元を自分の手で塞ぐ。
風雅さんに恥ずかしいことをペラペラ話さないで欲しい。


「意外だな。
そんなかわいい恋愛してるなんて」

「か、かわ…!?」


どこがかわいい恋愛だ。
危険な世界に巻き込まれて、脅されて。

油断すればすぐキスするようなやつだ。


「そういえば、乙葉(おとは)さんも中々の純粋で照れ屋ですよね」

「まあな。けど純粋だからこそ無意識のうちに積極的になったり、大胆になるからこっちは大変」


突然瀬野の口から女の人の名前が出てきて驚いたけれど、その会話からして多分、風雅さんの彼女だろう。


「そんな乙葉もかわいいんだけどな」


風雅さんは頬を緩ませて、ひどく優しい目つきへと変わる。

それほど“乙葉さん”を大切に想っているのが、彼の表情から伝わった。

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