愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜



幸せそうだなぁって。
いつか私もそのような相手が見つかるのだろうか。


「……川上さん?」
「…っ、なんでもない」


そう考えた時、なぜか瀬野を見てしまった私。

その視線に気づいた彼と目が合ってしまい、途端に恥ずかしくなる。


ない、それは絶対にない。
瀬野のような悪い男と恋をする趣味などない。



「あー、涼介が乙葉の話するから会いたくなって来た。今から俺もアジトに行かないといけねぇのに」

「乙葉さんも連れてきますか?」

「いや、乙葉は大学の講義中だから連れて行けねぇ。
あー、帰り大学まで迎えに行こ」


どうやら相当乙葉さんに惚れ込んでいる様子。

こんなにも愛される乙葉さんって、どんな人なのだろうかと少し気になってしまう。




「乙葉さんにベタ惚れですね」

「自覚済み。
まあ、涼介も同じだろ」

「同じですね。こんなかわいい川上さんに堕ちない方がおかしいです」

「さ、触るな…!」


すっかり油断していた。
瀬野が私の肩を抱き寄せ、密着状態になってしまう。


「ははっ、相変わらず川上さんは涼介に牙を剥けてるんだな」

「でも素直になられた時はもう、すごく心臓に悪いんですよ」

「デレた時ってやっぱりかわいいよなぁ」


こっちの身にもなってほしい。

目の前でそのような話をされて、恥ずかしくないわけがない。

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