愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
目が覚めた今、男と同じベッドにいるのは少し抵抗があった。
どうせなら瀬野の分のお弁当も作ってあげよう。
そう思い、長い髪を束ねてキッチンへと向かった。
とはいえ手の込んだものを作る暇はないため、いくつかお弁当用の冷凍食品も使わせてもらう。
昨日の夜ご飯はちゃんと作ったのだ、そこは目を瞑って欲しいところ。
卵焼きとサラダは手作りし、焼鮭も入れることにした。
あとは冷凍食品の力を借りて完成だ。
その次は朝ごはんを作ろうと思い、買っておいた食パンを取り出したその時。
ガタッと大きな音が部屋から聞こえてきた。
それは明らかに自然の音ではない。
瀬野の身に何かあったのだろうかと思い、部屋に戻ろうとしたけれど───
「どこに……っ!」
「え、あ…瀬野くん?」
焦った様子の瀬野が部屋を出てキッチンのところまでやってきた。
その額には汗が滲んでいる。
少し息も乱れている瀬野の身に一体何があったのだ。