愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜



「あっ、愛佳ちゃんだ…!」


いつもと同じ様子だったのは、幹部のみんなだけだった。

すでに光希くんや悠真くん、翼くんは寛ぎスペースで待っていた。


光希くんは私の姿を見つけるなり、すぐ駆け寄ってくる。


「大丈夫だった…!?お医者さんはちゃんと大丈夫だって言ってたの…!?」

それもすごい勢いで、力強く抱きつかれてしまう。
あまりの勢いに、少しだけ苦しかった。


「うん、異常はないよって言われたから、本当に大丈夫だよ!」


安心させるようにして光希くんに笑いかける。

彼は目に涙を浮かべながらも、ようやく安心してくれたようで。


「よ、よがった…本当に僕のせいでごめんね…」

「光希くんは悪くないよ!だから気にしないで?
それに光希くんこそ怪我は大丈夫?」

「僕はバッチリだよ!
こう見えて丈夫だから!」


なんて笑う光希くんだったけれど、あれほど力強く蹴られていたのだ。

恐らく痣になっているだろう。


「しばらくは安静にしててね」

「ありがとう!
でも安静にするのは愛佳ちゃんの方だよ」


それでも私のことを優先する光希くんは、本当に優しい人である。

ようやく光希くんが安心してくれ、ホッとしたのも束の間。

< 344 / 600 >

この作品をシェア

pagetop