愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
「あの、涼介さん…陽翔さんは来ないんですか?」
手下のひとりが陽翔くんについて質問したことにより、ようやく本題へと入った。
「今日みんなに集まってもらったのは、雷霆を倒したっていう報告と、それから…」
瀬野が響くんの隣に立ち、彼の肩に手を置いた。
「彼を紹介したくて。多分みんな、雷霆の幹部だと思ってるけど俺たちの味方だよ。
まずはそれを理解して、みんなに安心してほしい」
瀬野の声は落ち着いていたけれど、みんなは落ち着けないようで。
各々が驚いた表情を浮かべながら、騒めきだす。
「初めは混乱すると思う。
でも彼は味方で、逆に陽翔が敵だったんだ」
「……え」
「陽翔さん、が…?」
多くの人たちが戸惑いを隠せない様子。
そりゃそうだろう。
敬っていた陽翔くんが敵だと言われても、到底信じられないはずだ。
けれどそれが事実であるため、仁蘭のメンバーは皆受け入れるしかない。
瀬野はひとつひとつ説明し、理解を求めた。
さらに風雅さんの言葉もあり、みんながその事実を受け入れたようだった。
それでもまだ戸惑いはあるだろう。