愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
「ほら、落ち着け東郷。
女への免疫のなさは相変わらず健在なんだな」
「…っとに、女は無理なんだって…」
「っ、響くん…!?
は、鼻血が…!」
うろたえている響くんは、顔を真っ赤にしたまま鼻から血も流れて。
さすがの私もこれには動揺してしまい、慌てて鞄の中からティッシュを取り出して渡そうとする。
「こ、これ使って…?」
「く、来んな…!俺に近づくな…」
「え、あっ…でも血が…」
「バッ、これは別に…大丈…」
そこまで言いかけた響くんは、突然フラついてしまう。
そんな響くんを支えたのは悠真くんで。
けれど彼は面倒くさそうな表情をしていた。
「光希、どうしてくれるんだこの状況」
そう。
今の一通りのやり取りで、地下室が静まり返ってしまった。
取り乱した響くんは注目の的である。
「だってひーくんが僕を粗末に扱うから…!」
ふんっ!と怒った様子の光希くんに、反省の色はない。
「本当に個性強いよな、幹部メンバーは」
「そうですね、結構大変です」
静かな空気が流れる中、それを破ったのは風雅さんと瀬野だった。
「悠真は響を奥の部屋のソファで寝かせといてあげて」
「ああ、わかった」
瀬野の一言で、悠真くんは響くんを支えながら奥の部屋へと向かう。
相変わらず瀬野は判断を下すのが早い。