愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
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「瀬野と一緒に登校したって本当!?」
人気者の噂が流れるのは本当に早いもので。
その日の昼休み、昨日遊んだクラスメイトの沙彩とご飯を食べていた。
セミロングヘアーの沙彩は騒ぐことが大好きで、髪は金髪がかっている。
第一印象は怖いイメージを持たれることが多いが、実際は明るく元気な普通の女子高生だ。
そんな彼女は噂を耳にしたらしく、興奮気味だ。
「うん、そうだよ。
たまたま駅で会ったんだ」
一緒に登校すればこうなることぐらいわかっていた。
そのため私は嘘をつく準備もバッチリであった。
「えーっ、今までそんなことなかったじゃん!
愛佳が電車で来るのも珍しいし…」
「実は昨日、自転車がパンクしちゃって…電車で帰ったの。だからかな」
一瞬たりとも躊躇いは許されない。
些細な表情の変化で突っ込まれる場合もあるのだ。
「そうなのか…」
少し残念そうにしている反面、何やらソワソワし始めた沙彩。
この反応、きっと何かあるのだろう。
「だって愛佳、知らないでしょ?」
「知らない…?」
「瀬野が実は危ない男かもしれないってこと」
どきりとした。
その“危ない姿”を昨日と今日で何度か目にしたのだ。