愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
「そうなの…!?初めて聞いた!」
「なぜかあまり広まらないからね、瀬野の悪い噂」
私に至っては単に周りに興味がないだけなのだが、その噂自体あまり広まっていない様子。
「それで、どんな噂なの?」
そう聞き返したのは、恐らく昨日の今日だから。
私の知らない瀬野の一面を見た気がして、思わず聞かずにはいられなかったのだ。
「それがね…瀬野が度々目撃されるの、ネオン街の裏通りに行くところを。それも綺麗な年上の女性を侍らせて」
遠回しな言い方だったが、大人の街にでも行っているということだろう。
それには驚きだ。
あの真面目な彼が…なんて、これも単なる偏見に過ぎないけれど。
「誰にでも優しくて先生の信頼も厚いから、この噂を聞いた誰もが瀬野に似た別人だって言うんだけど…私は瀬野であってほしいかな」
「どうして?」
「人気者のイケメンが実は悪い男って、萌えない?」
沙彩らしい回答だと思った。
漫画やドラマの見過ぎな気がするけれど。