愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
「だって今、あんたが言った」
「俺が…?」
「足りないって」
「……確かに言ったね」
やっぱり認めた。
だから私は聞いたというのに。
「今日だけは許してあげる。
そこだけじゃ物足りないんでしょ」
「ねぇ、それって服を脱がせて良いって捉えるけど大丈夫?」
「……あんたに任せる」
そこまでは恥ずかしくて頷けない。
けれど抵抗をするつもりもない。
「なんか…うん」
「瀬野…?わっ」
自分なりに覚悟を決めたのだけれど、瀬野は突然私を力強く抱きしめてきた。
「風雅さんはこれを言っていたのか」
「えっ…?」
「はぁ…本当にダメだよ川上さん」
どうしてか、瀬野が大きなため息を吐いた。
何か気に障ることでもしたのかと不安になってしまう。
「突然積極的になられたら心臓に悪いよ」
「べ、別に積極的になったわけじゃ…」
「お願いだからかわいいことしないで。
さすがに俺も限界だよ」
頭をポンポンされる私は、ただ大人しく瀬野に身を預けた。
抱きしめられると落ち着くため、別に悪くない。