愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
幸せなデートと不安
頭を打った時にできた傷は、だいぶ良くなっていた。
少なくとも髪で隠せるぐらい。
何度も洗面所の鏡と向き合い、変なところがないか調べる。
髪は巻いて、前髪も整えた。
いつもはあまりしないメイクも施した。
服もだらしなくないかとしっかりと確認する。
「いつまで鏡と睨みっこしているの?」
その時、先ほどまで部屋にいたであろう瀬野が洗面所に顔を覗かせる。
「うるさいな、遠出するんだからこれぐらい当たり前でしょ」
鏡越しに瀬野を睨む。
変に邪魔しないでほしい。
「それ以上綺麗になってどうするの?
他の男みんな、川上さんに注目するんだよ」
せっかく服を整えたというのに、瀬野が後ろから私を抱きしめてくる。
「もー、邪魔しないで。
服がシワになっちゃうでしょ」
「大丈夫だよ。
十分綺麗になってる」
「あんたが抱きしめてくるからシワになるの」
「……なんか、キスマークつけたくなるね」
「…っ、ダメ」
瀬野の指が私の首筋をトントンしてくる。
ここにキスマークをつけたいとでも言うように。
「じゃあ今日、ネックレス買いに行こう。
俺のものって証ね」
「まあ、それなら別にいいけど…」
ネックレスって、なんだか特別感があって嬉しい気もする。
瀬野のものだという証がそれって悪くない。