愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
「えっと、さっきも沙彩に話したんだけど…」
「川上さん」
また一から説明して嘘をつかなければ。
やっぱり面倒だと思いつつ、口を開いたけれど。
優しい声がそれを遮った。
「噂をすれば…!」
私が振り返る前に、真弥の言葉で相手が誰なのかを理解する。
ゆっくりと振り返ると、私のすぐ後ろに瀬野が穏やかな表情で立っていた。
「瀬野くん、どうしたの?」
「あ、もしかして忘れてた?」
「……え」
「今日の朝、先生に呼び出されてたの。
昼休みにご飯食べたら職員室来てって」
瀬野の意図がわからない。
今の言葉は全部嘘だからだ。
一体瀬野が嘘をついた理由は───
「…あっ、本当だ!ごめんね瀬野くん、忘れてた!」
「もーそうなの?愛佳、早く行かないと!」
わざと焦ったフリをしながらお弁当を片付ける私。
その様子を見た沙彩が呆れていた。