愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
「川上さんは俺と一緒にいるのが嫌?」
「どうしてそうなるの?沙彩とかクラスの女子で遊びたいって話になってるから、瀬野が莉乃ちゃんと会ってる時に合わせたいだけ」
どこまでも弱気な瀬野に、もはや呆れてしまう。
もし彼を嫌になっていたら、すでに家から追い出している。
「……わかった」
そう言って、瀬野はようやくスマホを手に取った。
すでに電話は切れていて、彼からかけ直している様子。
電話の時ぐらい私から離れたらいいものの、彼は私の背中に空いている手をまわした状態のままだった。
仕方なくそのままの状態でいると、早速明日に莉乃ちゃんと会うことが決まったようだ。
「明日、夜ご飯は家で食べていい?」
「わかった。私も夜までには家に帰るようにする」
本当に夫婦のような会話だ。
顔を見上げて、思わず私は笑ってしまう。
「何笑ってるの川上さん」
「いや、おかしいなって」
「何がおかしいの?俺にも教えて」
「私たちの関係性が」
ここにきて、ようやく瀬野が優しい笑みを浮かべる。
私と目を合わせて、頬に手を添えてきて。
それからまた、ゆっくりと顔を近づけた彼にキスを落とされた。