愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜






次の日の昼休み。
瀬野はふたりで会いたいと言ってきた。

どうやら今日の放課後は莉乃ちゃんと会うため、その分昼休みに私と一緒にいたいということらしい。


やはりいつもと様子が変である。


「どうしたものか…」


今のところ、学校ではいつも通りの瀬野だった。

爽やかな笑顔を浮かべて、クラスメイトに囲まれる人気者の姿だ。


けれど私の前では違う。


「……ねぇ」
「んー、まだ離れたくない」

いつもの相談室で、先にご飯を食べるかと思いきや。
早々に私を抱きしめてきたのだ。


こんな甘えん坊のような姿を見たら、キット全員驚くだろうな。

今のところは私の独り占めである。
それはそれで悪くない…って、何プラスにとっているんだ。


これは良くないのだ。
瀬野には過去と向き合い、乗り越えてもらわないと。


「いつまでそんな弱々しい態度とってんの」
「川上さんを補給しないと俺、毎日やっていけない」

「バカじゃないの?
早く離れて、ご飯食べたいんだけど」


このまま食べずに終わってしまいそうで、瀬野から離れようとする。

けれど相手の力が強すぎて敵わない。

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