愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
*
次の日の昼休み。
瀬野はふたりで会いたいと言ってきた。
どうやら今日の放課後は莉乃ちゃんと会うため、その分昼休みに私と一緒にいたいということらしい。
やはりいつもと様子が変である。
「どうしたものか…」
今のところ、学校ではいつも通りの瀬野だった。
爽やかな笑顔を浮かべて、クラスメイトに囲まれる人気者の姿だ。
けれど私の前では違う。
「……ねぇ」
「んー、まだ離れたくない」
いつもの相談室で、先にご飯を食べるかと思いきや。
早々に私を抱きしめてきたのだ。
こんな甘えん坊のような姿を見たら、キット全員驚くだろうな。
今のところは私の独り占めである。
それはそれで悪くない…って、何プラスにとっているんだ。
これは良くないのだ。
瀬野には過去と向き合い、乗り越えてもらわないと。
「いつまでそんな弱々しい態度とってんの」
「川上さんを補給しないと俺、毎日やっていけない」
「バカじゃないの?
早く離れて、ご飯食べたいんだけど」
このまま食べずに終わってしまいそうで、瀬野から離れようとする。
けれど相手の力が強すぎて敵わない。