愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
「愛佳、最近は電車で登下校してるんだね」
「あっ、うん…瀬野くんが電車だから」
「瀬野と一緒に登下校するためにわざわざ電車通学に変えたの!?やだ愛佳、すごく瀬野のことが好きなんだ!」
何気ない私の返答にも、過剰に反応する沙彩。
恋愛脳なのか。
それでも変に否定はしないでおく。
まあ瀬野と一緒に住むようになってから、無意識のうちに電車通学に変えていたのだ。
「そ、そんな風に言われたら恥ずかしいな…」
「もー!本当に恋する愛佳はかわいいなぁ!」
ふたりで一緒に恋話や他愛のない話をしながら駅へと向かう。
駅に着いてからはふたり別々のホームへと向かい、私は風雅さんの働くバーに向かった。
まだ外は明るくて、ネオン街の表通りに位置するため、ひとりでも怖がらずに行くことができた。
ビルの4階、バーの扉を開ける。
すでに中には数人のお客さんがいた。
「いらっしゃいま…って、川上さん?」
「あ、風雅さん…いてくれて良かったです」
するとカウンターには、耳たぶにシルバーのピアスを光らせた風雅さんの姿があり、余計な手間が省ける。
「とりあえず座るか?
ここ、空いてるから」
風雅さんに指定されたのは、前回と同じ場所で。
急かすのも悪いと思い、とりあえず座らせてもらう。