愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜






私の鞄に煌凰の総長から渡されたスマホが潜む中、風雅さんの待っている車へと戻った。

すっかり外は暗くなっており、ブレザーのポケットに入れてある自分のスマホを見ると、瀬野から連絡が届いていた。


【駅に着いたら迎えに行くから連絡してね】


夜道が危険ということで、どうやら迎えに来てくれるらしい。

けれど今日は風雅さんが家まで送ってくれるため、それは大丈夫だ。


というより、もう瀬野は家に帰ってきているのか。


どのように返信するべきだろう。

母親のことは今日のうちに話そうと思っているけれど、瀬野に嘘をついたことは事実なのだ。


メッセージで嘘だと伝えると色々誤解を生んでしまいそうである。


「涼介、川上さんが帰って来なくて心配しているのか?」


風雅さんは一切、瀬野の母親のことに触れて来なかった。

あえてそのようにしていたのだと思う。


「駅からの帰り道が危ないから迎えに行くって連絡が来ていて…」

「あー、なるほど。ここで俺と一緒にいるって言ったら、涼介は妬くだろうな」

「えっと…?」


そう言って悪そうに笑う風雅さんの意図がわからないのだけれど。

何やら楽しそうに見えなくもない。



「涼介の嫉妬、見たくねぇ?」
「嫉妬…?」

「そう。涼介って結構嫉妬深いみたいだから」

「まさか。風雅さんも彼女さんいるんですよね?
それなのに嫉妬なんてするわけないですよ」


ふたりの間には信頼関係があるのだ。
嫉妬する方がおかしい。

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