愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜



「だったら試してみようぜ。
案外面白いもんが見れるかも」

「そんなことして何が楽しいんですか…」


さすがの私も風雅さんに呆れたけれど、本人はやる気満々で。

結局風雅さんと一緒にいるという趣旨のメッセージを瀬野に送らされてしまった。


けれど思いの外、瀬野の返信は簡潔なものだった。

【それなら安心だね】という、むしろ感謝の意が込められているような。


「やっぱり嫉妬なんてしてませんよ」
「それは涼介に会ってからの楽しみだな」

まるで瀬野の反応をわかっているかのような言い方だった。

風雅さんの表情を不思議に思いつつ、車は私の家に向かって走っていた。



私の家のあるアパートに着くと、車が目の前で停められる。

瀬野に顔を出してから帰るという風雅さんと一緒に、部屋へと向かう。



「へぇ、ここが涼介と川上さんの愛の巣か」
「あ、愛の巣…!?な、何言ってるんですか!」

その言葉に対し、過剰に反応してしまう私。
恥ずかしいことを言わないでほしい。


「川上さんが照れてる」
「し、静かにしてください…!」

「幸せそうで何よりだな」


風雅さんも意地悪な人だ。
さすがは瀬野の先輩。

瀬野に負けず劣らず、性格が悪い。
彼の彼女さんも大変なことだろう。

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