愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
「瀬野、風雅さんの分も用意できる?」
「あ、うん。大丈夫だよ」
「じゃあ風雅さんの分もお願い。
もしあれだったら私も手伝う」
「本当?お願いしようかな。
風雅さんは部屋で待っててください」
瀬野は爽やかな笑みを浮かべるけれど、どこか偽物っぽい。
急に風雅さんの分も作らないといけなくなり、面倒だと思ったのだろうか。
「あっ、風雅さん!
先に車を移動しないと…!」
確かアパートの前に停めただけであるため、来客用の駐車スペースに移動しないといけない。
「来客用とかあんのか」
「あるみたいです。案内するんで来てください」
「……わかった」
風雅さんは文句を言うことなく、もう一度靴を履いて外へと出た。
「にしても川上さん、中々悪い性格してるんだな」
「えっ…?」
そして風雅さんは外に出るなり、一言そう口にした。