愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
「何がですか?」
「あっ、もしかして自覚なしか」
「一体何の話をしてるんですか」
「ここで俺を連れ出したら、さらに涼介は妬くだろうなぁ」
「まだその話をしているんですか?」
思わずため息を吐いてしまう。
どう見ても瀬野は妬いていなかった。
「まったく、無自覚は怖いな。
乙葉も自覚ナシだから余計にタチが悪い」
「乙葉さんって風雅さんの彼女さんですよね」
「そうだ。すっげぇかわいいんだぜ」
乙葉さんの話をすると、途端に頬を緩めて幸せオーラ満開になる風雅さん。
ここまでわかりやすい人間がいるだろうか。
「一度会ってみたいです」
「そうだな、川上さんと会わせ…られないな」
「えっ、どうしてですか」
「川上さんの方が大人びて見えるから、乙葉の落ち込む姿が想像できる。乙葉、実年齢より幼く見られるから」
私はその逆だ。
実年齢より高く見られることが多い。
それを風雅さんは指摘しているのか。
「そうですか…でも会いたかったなぁ」
「じゃあダブルデートってのはどうだ?」
「ダブル、デート…」
「まあ俺たちのラブラブっぷりに、ふたりとも見てられないかもしれないが」
「すごい自信ですね…」
乙葉さん次第では、相当なバカップルに思えるかもしれない。