愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
瀬野の思い描く“統一”とは違うかもしれないけれど。
全員が無事であることを一番に願いたい。
そして瀬野はもうこの世界から足を洗って、母親と幸せに暮らしてほしい───
「川上さん?」
「…っ、ごめん…いこう、お腹空いた」
何を深く考えているんだ私。
とりあえず今は煌凰の総長の言葉なんかよりも、瀬野の母親のことの方が大事だ。
「おおっ、すげぇ美味しそうだな。料理もできるって、そろそろ涼介が怖くなってきたぞ俺は」
料理を目にするなり、風雅さんはそう口にした。
完璧な瀬野は、もはや恐れるレベルのようだ。
確かにここまで完璧な人間など、そう簡単には現れないだろう。
「逆に風雅さんはできないんですね?
乙葉さんに任せてばかりだと負担も大きいですよ」
「おっ、言うじゃねぇか」
「事実を述べたのみです」
少しばかり挑発的な態度を取る瀬野。
珍しい。
突然家に上がった風雅さんに対して、少しお怒りのようだ。
「ほら、ご飯が冷める前に食べましょう…!」
私の一言でようやくご飯を食べ始める。
風雅さんは瀬野の挑発に乗ることなく、美味しそうに食べていた。