愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
「すげぇな、本当にふたりで暮らしてんだ」
「瀬野も積極的に家事をしてくれるんで、負担なく助かってます」
最初は私がその条件を突きつけたのだけれど、瀬野は嫌がることなくいつも家事を手伝ってくれる。
逆にひとりで暮らしていた時より楽だったり。
精神的な疲労は瀬野と一緒にいるときの方が大きいけれど。
だっていつも瀬野は私をおかしくさせるから疲れるのだ。
「へぇ、じゃあ上手いこといってるんだ」
「そうですね…何とかいけてます」
特にストレスなく今日までやってこれたのは事実だ。
相手が瀬野だったからだろうか。
「だってよ涼介、良かったな」
「……本当に風雅さんって直球ですね」
「良い返しが聞けて良かっただろ?」
ここに来て風雅さんの視線が瀬野へと移る。
何やらニヤニヤ笑っている風雅さんの意図はわからなかったけれど。
ご飯を食べ終わるなり、風雅さんはすぐに立ち上がった。
「もう帰るんですか?」
「えっ、まだいていいのか?」
「そんなのご飯食べてすぐ追い出す方がおかしいと思いますが…」
一応もてなしている身なのだ。
ゆっくりしてもらって構わないけれど。