愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
「気にするよ。
でもお礼って、何がいいんだろう」
そんなこと聞かれたって答えられない。
無難にお菓子とかなんとか言うべきだろうか。
「そうだ。今度ご飯でも奢らせてよ。
もっと川上さんのこと、知りたいって思ったから」
けれど、ここでまさかのご飯。
なぜ外でも瀬野と一緒じゃないといけないのだ。
「それだとまた誤解されちゃうかもしれないよ!
本当に気を遣わなくて大丈夫だから!」
ここで笑顔を浮かべる。
本当に大丈夫だという意志を示したつもり。
「中々手強いね、上手いように断られる」
「そ、そんなこと…今日の瀬野くん、少し変だね」
「川上さんも、ね。
場の切り抜け方がすごく上手だ」
ご満悦な様子の瀬野に、思わず身震いする。
信じたくなかったけれど、こいつの裏は深そうだ。