愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜



「気にするよ。
でもお礼って、何がいいんだろう」


そんなこと聞かれたって答えられない。
無難にお菓子とかなんとか言うべきだろうか。



「そうだ。今度ご飯でも奢らせてよ。
もっと川上さんのこと、知りたいって思ったから」


けれど、ここでまさかのご飯。
なぜ外でも瀬野と一緒じゃないといけないのだ。


「それだとまた誤解されちゃうかもしれないよ!
本当に気を遣わなくて大丈夫だから!」


ここで笑顔を浮かべる。
本当に大丈夫だという意志を示したつもり。


「中々手強いね、上手いように断られる」
「そ、そんなこと…今日の瀬野くん、少し変だね」

「川上さんも、ね。
場の切り抜け方がすごく上手だ」


ご満悦な様子の瀬野に、思わず身震いする。
信じたくなかったけれど、こいつの裏は深そうだ。

< 46 / 600 >

この作品をシェア

pagetop