愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜



「川上さんは今日、どこに行っていたの?」


ドライヤーの音で声が遠く聞こえる中、瀬野に質問される。

早速、風雅さんといた経緯に触れてきたのだ。



「まあ、色々…逆に瀬野は?
莉乃ちゃんとどこに行ったの?」


さすがに今、ドライヤーの音にかき消される中で瀬野の母親の話をするのは気が引ける。


「俺?俺は莉乃が行きたいって言った場所の付き添いかな。スイーツのお店とか、服のお店とか。気に入った服も買えたみたい」

「へぇ、ショッピングか。
いいなぁ、私も今度服買いに行きたい」

「じゃあ週末にでも行こうか」
「本当?行きた…あっ」


何即答しようとしているんだ私。
瀬野の母親と会うのが第一優先なのだ。

買い物だなんていつでもできるだろう。


「予定でもあるの?」

「いや、予定っていうか…ほら、その時の気分にもよるかなって」

「確かにその時は川上さんと家でイチャつきたいかもしれないから…」

「べ、別に私はそんなこと考えてないからね…!?」
「えー、それは悲しいなぁ」


またそうやって、私の反応を楽しみながらクスクス笑う。

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