愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
「瀬野、あのさ…」
「今日は風雅さんと会っていたの?」
「えっ…」
けれど覚悟を決めた時に限って、瀬野もほぼ同時に口を開いて。
いつもより声のトーンが落ちているような。
気のせいだろうか。
「俺じゃなくて風雅さんを頼ったって、本当?」
「…っ」
そういえば、風雅さんが誤解されるような言い方をしていたっけ。
瀬野は完全に誤解をしているようだ。
「頼ったのは本当だけど、意味合いが違うから…」
「確かクラスの女子で遊ぶって言っていたよね」
「…っ!?」
「嘘、ついたの?川上さんは悪い子だね」
今の状況が危険であることにようやく気づく。
どうやら瀬野の機嫌はすこぶる悪いらしい。
ニコニコと笑っているけれど、何とも圧のある作り笑いだ。
「ま、待って…私の話も聞いて」
「悪い子の言い訳なんて聞かないよ」
「だから私は…って、待って待って…わっ!?」
瀬野が迫ってきたかと思えば、突然体を抱きかかえられてしまう。
嫌な予感が膨らむばかり。
これはあまり良くない兆候だ。
「降ろして瀬野!」
「ベッドの上でね」
「なっ…何考えて」
「嘘は悪いことだよって教えてあげないと」
その笑顔が怖い。
抵抗も虚しく、本当にベッドの上で降ろされてしまった。