愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜



「……川上さん?」
「やだ、絶対に離さない!」


このまま瀬野に押し倒されそうな気がして、それを阻止するために彼にギュッと抱きついた。

流されてたまるか。
今日、私は瀬野に大事な話をしなければならないのだ。


「私は今日、瀬野に大事な話があるの!」
「あとでちゃんと聞いてあげるから」

「先に話させて!言い訳じゃなくて、本当に大事な話で…終わったら私を好きなようにして良いから!」


このままだと不利になりそうだったため、条件付きで先に話させて欲しいと言ったけれど。

言ってから、やってしまったと後悔する。
瀬野ばかりが得をする条件にしてしまったのだ。


「ま、まって…」
「うん、いいよ」

「えっ…?」

「先に話していいよ。そしたら俺が好きにしていいんだよね?川上さんにたくさん恥ずかしいことしてあげる」

「…っ!?」
ぶわっと熱くなる顔。

首を横に振って否定しようとしたけれど、どうやらもう私に逃げ道はないようだ。


ここは諦めて、瀬野から離れる。

特に手を出される様子はなかったため、私は気持ちを落ち着かせてから今日の話をすることにした。


「今日、瀬野に嘘ついて風雅さんのところに行ったのは…瀬野の、お母さんに会いたかったから」

「……え」


ようやく本題に入ると、瀬野はすぐに驚いた表情をした。

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