愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
「このままじゃダメって思ったの。せめて私だけでも真相を知りたくて、風雅さんを頼った。それで翼くんと会って、調べてもらって…」
「……翼が調べてくれたの?」
「あっ、うん…何とか、説得して…でも本当無理やりだったから、翼くんは責めないであげてね!」
ここで翼くんが責められてしまったら申し訳ない。
私は全力で翼くんを庇う。
「それで見つけてくれたから会ってきた」
「…っ」
「ねぇ、瀬野。一度お母さんに会って話そう?
怖いかも知れないけど、私もそばにいてあげるから」
私は本気だという意思表示で、じっと彼から目を逸らさない。
少しの間見つめ合ったところで、瀬野は小さく首を横に振った。
「……瀬野」
「会ったら余計に憎しみが増すかもしれない。
それが怖い」
それは明らかに拒否の意思を示していて。
けれどここで引くわけにもいかない。
私はベッドに膝立ちして、それから瀬野を優しく抱きしめてやった。