愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜



「このままじゃダメって思ったの。せめて私だけでも真相を知りたくて、風雅さんを頼った。それで翼くんと会って、調べてもらって…」

「……翼が調べてくれたの?」

「あっ、うん…何とか、説得して…でも本当無理やりだったから、翼くんは責めないであげてね!」


ここで翼くんが責められてしまったら申し訳ない。
私は全力で翼くんを庇う。



「それで見つけてくれたから会ってきた」
「…っ」

「ねぇ、瀬野。一度お母さんに会って話そう?
怖いかも知れないけど、私もそばにいてあげるから」


私は本気だという意思表示で、じっと彼から目を逸らさない。

少しの間見つめ合ったところで、瀬野は小さく首を横に振った。


「……瀬野」

「会ったら余計に憎しみが増すかもしれない。
それが怖い」


それは明らかに拒否の意思を示していて。
けれどここで引くわけにもいかない。

私はベッドに膝立ちして、それから瀬野を優しく抱きしめてやった。

< 466 / 600 >

この作品をシェア

pagetop