愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
このまま上手くいけば、瀬野と母親は元の親子関係を築けるかもしれない。
そしたら瀬野は幸せな日々を送って───
『瀬野のいる世界がそれを邪魔する』
ここに来てまた、あの男の言葉が脳裏を過ぎった。
忘れてはいけない、瀬野が裏の世界に属する人間だということを。
「……川上さん?」
「あ、えっと…そろそろ寝ようかな」
ダメだ、今そのようなことを考えたら。
瀬野に勘付かれてしまうかもしれない。
このまま寝る準備に入ろうと思ったけれど。
「それはダメだよ、川上さん」
「……え」
「俺が寝かせてあげると思う?」
「…っ」
意地の悪い笑みを浮かべる瀬野。
いい雰囲気で話が終われたため、このまま何もなく寝れると思ったのが間違いだったようだ。
「話が終わったら川上さんのことを好きにしていいんだよね?」
「い、言ったけど…」
「嘘をついたこと、俺を妬かせたこと。
このふたつは今も許してないよ」
「……っ、心狭い」
「あれ、反省してないの?
それはもっと悪いことだね」
ダメ、本当に。
首を横に振るけれど、彼は止まらない。