愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜



「川上さんの思う恥ずかしいことって何?」
「……全部」

「じゃあ全部していいの?」
「……ダメ」


明日も学校があるし、そもそも初めてである。
心の準備というものが必要だ。


「そうだろうね。
でも悪いことだって認めないと」

「私は瀬野のためにしたことであって、何も悪く…」

「悪くない?俺が嫉妬するようなことばかり風雅さんにしていたくせに」

「あんたが勝手に嫉妬しただけでしょ」


私は悪くない。
そもそも嫉妬した理由が不明だ。

瀬野から顔を背け、対抗する意思を見せたけれど───


「……本当に悪い子だね、川上さんは」


瀬野が目を細めて笑い、頬にキスを落とされる。

唇にされるのかと思い構えてしまった私は、反射的に目を閉じてしまった。


「あれ、ここにされると思った?」
「…っ」

目の前の男に、もう優しさなどない。
ただただ私をいじめて楽しそうな最低男だ。

今だって私の唇を指でなぞり、楽しそうに笑っている。


「そうだなぁ、川上さんがちゃんと『ごめんなさい』ができたらキスしてあげるからね」

「は…」


ニコニコ笑う男は本気だった。
冗談っぽさなど微塵も感じられない。


「今、なんて…」

瀬野が私の髪を耳にかける。
相変わらず乱れのない笑みで。

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