愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
「ほら、川上さんはいい子だから」
さっきまで悪い子って言っていたくせに。
瀬野に従順になることが、果たしていい子なのだろうか。
そんなのわからないけれど───
「瀬野…」
「うん?」
「私が、悪かったから…」
「何が悪かったの?」
変に焦らされて、もっと甘さが欲しいと思ったから。
プライドなんてものより、求めている自分がいた。
「……瀬野を妬かせたこと」
「うん」
「…っ、あと、嘘ついたこと」
「そうだね。認めることも大事だけど、それよりもっと大切なことがあるよね?」
とことん私のプライドを崩してくる瀬野は楽しそうで。
「……ごめん、なさい…」
ギュッと目を閉じて。
恥ずかしい気持ちを押し殺そうとする。
「うん、よくできました」
嬉しそうな声。
そして私の頭をポンポンしてくる。
欲しいのはそれじゃないのに。