愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜



「ほら、川上さんはいい子だから」


さっきまで悪い子って言っていたくせに。
瀬野に従順になることが、果たしていい子なのだろうか。

そんなのわからないけれど───


「瀬野…」
「うん?」

「私が、悪かったから…」
「何が悪かったの?」


変に焦らされて、もっと甘さが欲しいと思ったから。
プライドなんてものより、求めている自分がいた。


「……瀬野を妬かせたこと」
「うん」

「…っ、あと、嘘ついたこと」

「そうだね。認めることも大事だけど、それよりもっと大切なことがあるよね?」


とことん私のプライドを崩してくる瀬野は楽しそうで。


「……ごめん、なさい…」

ギュッと目を閉じて。
恥ずかしい気持ちを押し殺そうとする。


「うん、よくできました」


嬉しそうな声。
そして私の頭をポンポンしてくる。

欲しいのはそれじゃないのに。

< 472 / 600 >

この作品をシェア

pagetop