愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
「さっきは気を遣ってここに連れてきてくれてありがとう。私はもう行くね!」
本当はお礼なんて言いたくなかったけれど。
最後まで表向きの自分を保つため、ここは我慢である。
嫌な気持ちが顔に出ないうちに、私はその場から立ち去った。
教室までの帰り道。
廊下に視線をやりながら、私はじっと考えていた。
「……危険、だ」
これ以上瀬野と関わることは危険だと、本能すらも警報を鳴らしているような気がして。
間違いない。
あいつも偽っている。
だとしたらこれ以上の接触は危険であり、面倒だ。
けれどこの噂さえ消えたら、もう瀬野と関わることもあるまい。
今はただ大人しくして、瀬野との関わりを極端に減らそうと心に決めた。