愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
「ねぇ、川上さん」
「なに?」
「このまま真っ直ぐ家に帰る?」
「えっ?」
てっきり私は帰るものだと思っていたため、瀬野の質問に対して素直に驚いてしまった。
「この間言っていたよね、服を買いに行きたいって」
「あっ、確かに言った」
「だから服を買いに行こう。
せっかくだし俺も何か買おうかな」
それはつまり、デートということだろうか。
別に家に帰ってからの予定はない。
それに───
私が瀬野と一緒にいられる時間は1週間と限られている。
そう考えると、頷くという選択しかなかった。
少しの時間も無駄にしたくない。
どうせなら、時間の許される限り瀬野と一緒にいたい。
「その前にまずご飯食べたい、お腹空いた」
「そうだね、今は何の気分?」
「んー、ガッツリしたものがいい」
デートとはいえ、瀬野相手に気を遣ったりしない。
ここはかわいく『パスタ』とかお洒落な店がありそうなものを要望すべきかもしれないけれど、私は素直に答えた。