愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
今はお肉などのガッツリしたものが食べたいのだ。
「じゃあステーキとかにする?」
「いいね、ステーキ。
ハンバーグとかでもいいかも」
「じゃあそういう系統のお店だね」
けれど瀬野は表情一つ変えず、すぐに私の意見を受け入れてくれた。
「驚かないんだ」
「驚く?」
「かわいげのない女だなって」
「何言ってるの?川上さんはかわいいよ」
逆に瀬野は私の言葉に対して目を丸めていた。
違う、そういうことではない。
「ステーキとか要望する女、嫌じゃないの?」
「どうして嫌なの?
川上さんとなら何処へでも行くよ、俺」
まるで当たり前であるような口ぶりに驚きつつも、結構嬉しいかもしれない。
「ふーん、そんなに私のことが好きなの?」
「大好きだよ、今すぐ触れたいぐらい」
「バカ、バスの中だから考えて」
「大丈夫。そこまで人は多くないし、簡単にばれたりしないよ」
けれど瀬野はすぐ調子に乗ってしまう。
こんなところでキスだなんて、何を考えているのだか。