愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
「キスはダメ」
「それは悲しいな」
「その代わり…」
キスは拒否したけれど、その代わり私から瀬野にくっついてあげる。
瀬野の肩に頭を乗せ、彼の手を握ったのだ。
「今はこれで我慢して」
「…っ、本当にかわいいことするよね川上さん」
「キスは家に帰ってから考えてあげる」
「するよ絶対。今日も川上さんと甘いことをたくさんするんだ」
そう宣言されても困る。
家に帰ってから意識してしまうではないか。
甘い時間があるのだということを。
結局期待してしまう自分がいる。
こんなにも好きになっていただなんて。
触れたいと思うほど、彼のことが。
「この間みたいに意地悪なことしない?」
「あれは川上さんが悪いことしたから、その罰なんだよ」
「別に私は何も悪いことしてない」
「あれ、まだ反省してな…」
「嘘!嘘だから!」
また前回のように意地の悪いことをされてたくぞう困る。
散々焦らされて、求めるようなことを言わされて。
プライドなんて壊されたようなものだ。