愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
「でも欲しがる川上さん、すごくかわいかったなぁ」
「本当にあんたって性格悪い」
「焦らしたくなるんだよ、川上さんの反応がかわいくて」
「…っ、やっぱり今日は帰る」
「ほら、そんなこと言わないで?川上さんが悪いことをしない限り、意地悪はしないよ」
「…本当?」
「もちろん」
それなら安心して瀬野に身を任せられる。
前回のような焦らしはもう嫌だ。
「じゃあいいよ」
「本当?嬉しいなぁ。
今日はどんな川上さんが見られるかな」
楽しそうな声。
彼は今、目を細めて笑っていることだろう。
けれど───
もし煌凰に行ってしまったら、瀬野は私に対してどう思うのだろうか。
裏切られたと思い、幻滅して憎しみを抱く…あるいはもう二度と顔を見たくないと思うかもしれない。
少なくとも彼の気持ちが離れていくのが目に見える。
ああ、こんな残酷な運命が待っているのなら最初から出会わなければ良かった。
あの日、沙彩と遊ばなければ良かった。
そしたら瀬野と関わりを持つこともなかったのだ。