愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
「…さん…川上さん」
「ん…?」
「川上さん、もうすぐ終着だよ」
「え…」
遠くの方で誰かに名前を呼ばれたと思い、ゆっくりと目を開ける。
どうやら私は瀬野に寄り添って眠っていたようだ。
すごく長い時間寝ていた気がするけれど、時間にしてみればだったの数分だった。
「疲れてるのかな、気づいたら寝ていたよ」
「そうみたい…」
「今日は家帰ってお昼寝する?」
「えっ、でも…」
「明日も休みだから、明日に出かければいいんだよ」
「本当?」
それなら明日に出かけたい。
最後の休日なのだ、家に過ごすのはもったいない。
「今日は家でのんびり過ごそう」
「うん…あ、でも帰りにスーパー寄りたい」
「じゃあ近くのスーパーに寄ってから帰ろう。
もう瀬野とスーパーに行くのは何度目だろう。
デートらしい場所よりもスーパーに行く頻度の方が高い。
「せっかくだし今日はステーキにしよかな」
先ほど食べたいと言っていたのだ。
家で作るのもいいかもしれない。