愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
「寝込みを襲うようなことはしないよ」
「絶対に嘘だ、瀬野なら手を出しかねない」
「でも川上さんは無防備だから、簡単に手を出せるんだろうな」
「なに気持ち悪いこと考えてるの」
「試していい?どこまで手を出せ…って嘘だよ、そんな怖い顔しないで」
調子に乗るなと言ってやりたいけれど。
ここはグッと我慢する。
残された時間は僅かなのだ、変な空気にはしたくない。
「試すなんて許さないから」
「もちろんそんなことはしないよ。
でも起きなかったらバレないよね」
「もうあんたの分のステーキは私が食べてやる」
「じゃあ俺は川上さんを食べていい?」
「なっ…に言って!」
さらっとなんてことを言うんだ。
本当に信じられない。
今だってニコニコと笑って。
冗談に思えないのが怖い。
「いつになったら俺は川上さんを食べれるんだろう」
「…っ、ふざけたこと言わないで」
「最初はヤらないことを望んでいたから大丈夫だと思っていたんだけど…最近は結構我慢するのが辛いよ。
だって俺たち、恋人同士なんだよ?
それで一緒に住んでいるってもうさ…?」
遠回しに何かを伝えようとしてくる瀬野。
伝わっているけれど、首を横に振った。