愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
もちろんこれも考えの一つである。
瀬野は不服そうだったけれど、仕方がない。
沙彩と別れた私は電車に乗り、家へと目指す。
その途中に“あるもの”を手に入れるため、近所のスーパーに寄った。
それは煌凰の総長から渡された睡眠薬を入れるための小道具になるもので。
家に帰った時点で、私は自分を偽らないといけない。
それも瀬野にバレてはいけない偽り方。
アパートに着き、自分の家の前で立ち止まる。
落ち着いて、私。
一度深呼吸をしてから思い切って中に入る。
「……あれ、川上さん?
どうして連絡してくれなかっ…」
音に気づいた瀬野は、玄関に顔を覗かせた。
それと同じタイミングで、私は手に持っていた袋を後ろに隠す動作をする。
「ご、ごめん…連絡忘れてた」
なんて、わざと怪しまれるように目を逸らした。
瀬野のことだから、きっと逃さない。