愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
中学の時に勝手に誤解され、妬まれたこともあるのだから尚更嫌である。
「とりあえず歌おうぜ!」
「ちょっとひどくない!?私の扱い」
全員楽しそうである。
見た目こそ悪そうだけれど、沙彩と同じで良い人なのかもしれない。
けれど私は他校との関わりなんて持ちたくない。
どうにかしてこの場を去りたかった。
そのためにはまず自分も楽しいフリをする。
人前で歌うことなんてあまり好きじゃないけれど、男ウケしそうな恋愛ソングを歌っておく。
「愛佳ちゃん歌も上手いのかよ…」
「綺麗な歌声だな」
なんて、聴き入る男たちが心底気持ち悪い。
けれど悪気はないのだ、ここは我慢である。
男たちや沙彩が歌ってる時は手を叩いて。
時折体も揺らして乗っているフリをする。
歌い終われば拍手をして、ジュースも頼んだポテトもそれなりに食べて盛り上がってると思わせる。
そして───
「……えっ」
一瞬静かになったタイミングを見計らって、スマホを見ながらわざとショックを受けたような声を出す。