愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
「き、今日は疲れたの…!
先にお風呂入るから!」
「俺が入っている間に寝ないでね?」
「こ、ココアは一緒に飲むから、寝ない」
「あっ、それって寝たくないって…」
「うるさいうるさい!もう早く離れて!」
焦ったフリをして瀬野を離し、慌ててお風呂に入る準備をした。
このままだと本当に心が揺れてしまいそう。
お風呂に入り、ひとりの状況でもう一度決心を固める。
もしここで行動しなければ、煌凰の総長はすぐ次の手を打ってくることだろう。
大丈夫、きっと。
本来ならば私は、瀬野と関わることなどなかったのだ。
それでも関わってしまったのは、きっと何かの縁。
敵の元に行ってからはどうなるかわからないけれど。
どうせなら瀬野に嫌われて、裏切り者だと恨まれて終わりたい。
それから忘れてくれることを願いたい。
瀬野にはもう、母親がいるから大丈夫だろう。
だからどうか最後まで───
「瀬野、上がったよ」
平然なフリをして声をかけるけれど、胸がギュッと締め付けられる。
やっぱり瀬野は嫌いだ。
こんな風に私の感情をも乱してくるから。
「じゃあ俺も入ってくるね」
「……うん」
瀬野がお風呂に入ったのを確認してから、私は準備を始める。
しばらくは瀬野と距離をあけたい。
別れ話より先に、離れる期間を設けたかった。
そのため学校も一週間以上は休むつもりだ。
今年度は学校を休んだことがないため、授業日数は十分足りているから可能だった。