愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
「やっとふたりの時間ができたなって」
「…っ、いつもこの時間帯はふたりでしょ」
あくまで冷静に。
惑わされないように。
「そうなんだけどね、学校がある日はふたりの時間が極端に減るから…」
「毎日ずっと一緒にいる方がおかしいでしょ」
「厳しいなぁ、川上さんは」
瀬野は小さく笑いながらも、私の頭を撫でてくる。
ダメージは一切受けていない様子。
もう私のことをわかっているようだ。
「…あのさ、川上さん」
「なに」
「明日、また病院に行こうと思うんだ」
「え…」
それはいつも通りの穏やかな口調だった。
思わず顔を上げると、瀬野は優しい眼差しを私に向けていて。
「習慣にしないと、逆に会いに行けない気がして」
「……私は付き添い?」
「うん、ついてきて欲しいな」
その言葉に胸が痛む。
せっかく瀬野が前向きな決断をしたというのに、明日になれば私───
「仕方がないな、慣れるまでだからね」
「良かった。ありがとう」
ううん、変に怪しまれてはいけない。
ここは瀬野に嘘をついた。
私もついていくと。