愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
「瀬野、眠たいの?」
「んー、どうしてだろう。
今日は夜遅くまで起きるつもりだったのに…」
「私は早く寝るつもりだったけど」
「ほら、そんな悲しいこと言わないで」
一度小さく笑った瀬野は、やはりまぶたが重そうである。
もう睡眠薬が効いてきたのだろうか。
「眠たかったら寝たら?明日は学校ないんだし、ふたりの時間がいっぱいあるでしょ」
「そうなんだけどね…惜しいなって」
突然の睡魔と闘っている様子の瀬野。
追い討ちをかけるようにして、瀬野が手に持つマグカップを奪う。
「川上さん…?」
「ほら、その状態で寝るの?」
マグカップをテーブルの上に置く。
ココアはまだ残っていたけれど、飲み終わる前に効果がきたようだ。
「おかしいな…こんな眠たくなるなんて」
どきりとした。
瀬野が突然の睡魔を不思議に思い始めたから。
バレるかと思ったけれど、眠気のせいで頭がうまく回らなかったようで。
「まあいいや…川上さん、寝る時俺を起こしてね」
「えっ…」
瀬野は私をギュッと抱きしめてきた。
最初こそ戸惑ったけれど、しばらくして小さな寝息が耳に届いた。