愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
どうやら眠りについたようだ。
意外とすんなり事が進み、呆気なかった。
気づかれたらダメだというのに、今になってそのようなことを考えるだなんて。
ゆっくりと瀬野から離れ、深い眠りについたことを確認する。
そしてマグカップを片付け、洗い物を済ませる。
何事もなかったかのように。
それが終わると、次に家を出る準備をした。
最低でも一週間は空けるつもりなのだ。
相当な荷物になってしまいそうな気がする。
正直、その後のことは想像ができないけれど。
瀬野と話すことになるのだろうか。
それとも避けて終わるのだろうか。
「……もしもし」
準備が終わると、また私の物ではないスマホを使って電話をかけた。
相手はもちろん、煌凰の総長で。
『ああ、ようやく準備が終わったか』
「……だから電話してるんでしょ」
『ハハッ、相変わらず気の強い女だ。
俺のあげた睡眠薬は役に立っただろ』
「……っ」
全部お見通しのようだった。
きっと自分の力では別れられないと初めから分かっていた。
だから睡眠薬を私に渡してきたのだ。