愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
「愛佳ちゃん?どうしたんだ?」
「み、みんなごめん…ちょっと用事ができて…」
「えっ、もしかして愛佳帰っちゃうの?」
「本当にごめん…!なんか飼ってるペットの調子があまり良くないみたいで…」
さらっとついた嘘。
ペットなんか飼っていないけれど。
叔母さんの家にいた時は犬を飼っていたから、それを思い浮かべる。
「え!それは早く帰らないとじゃん愛佳ちゃん!」
「ペットの調子悪いなら仕方ないね!」
「愛佳ペット飼ってたんだ!なんのペット…って、それどころじゃなくて!支払いも私たちがやっとくから大丈夫だよ!」
「え、でも…さすがにそれは」
「いいから俺たちの奢りだ!」
うん、やっぱり人は見かけによらない。
カラオケの代金も奢ってくれるようで、その言葉に甘えることにした。
「本当にごめんね…!
じゃあ私、お先に失礼します!」
わざと焦っているそぶりを見せ、その場から立ち去る。
店を出てカラオケボックスが見えなくなったところで、ようやく立ち止まった。