愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
「……好きだよ瀬野。
こんなにも苦しくなるくらい」
この感情のせいで苦しくなるのだ。
今だけはこのような感情がなくなればいいのに。
けれど今は、そのようなことを言っていられない。
涙を拭って立ち上がる。
「…よしっ」
大丈夫。
少しの弱さも相手に見せてたまるか。
このような素直じゃない強気な女、すぐに飽きるだろう。
いつまでも危ない世界にいたくない。
瀬野がいないのなら特に、いつも通りの平和な日常に戻りたいものだ。
「じゃあ…瀬野、サヨナラ」
部屋の電気を消す。
途端に辺りは暗闇に包まれた。
それから玄関へ向かい、荷物を持って外に出る。
どうか瀬野が母親と上手くいって、この危険な世界から離れますように。
そう願いを込めて───