愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
イツワリの言葉
煌凰の総長の名前は、剛毅といった。
全員が“さん”付け、あるいは“総長”と呼んでいて。
次の日に私は煌凰の集まりに連れて行かれ、早速彼の女だと紹介された。
その時、場がどよめいた。
私は“仁蘭の総長の女”と周囲に認知されていたらしい。
「剛毅さん、本当にこの女を連れてきて大丈夫なんですか?」
彼のそばにいる男は、幹部のうちのひとりらしい。
だが、そのような幹部ですら彼を“さん”付けした上に敬語を使っていた。
明らかにこの場所には異様な空気が漂っていた。
「なんだ、悪いのか?」
「い、いえ…そのような訳では…!」
幹部という男も十分偉い地位のはずなのに、総長の存在に怯えていた。
「こいつは…いや、愛佳はもう仁蘭の裏切り者だ。
瀬野を捨てて俺を選んだからな」
馴れ馴れしく名前を呼ばれて思わず身震いした。
もう“自分のモノ”として扱ってくる。