愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
「今頃瀬野は焦ってるんじゃないか?
目が覚めたらお前がいないなんて」
「…っ、さぁね」
私のスマホはもう彼の手にある。
もし私が持っていたら中途半端なことをしてしまいそうだから、別にそれで良かった。
けれど瀬野は今、目が覚めてどう思っているだろう。
私のメッセージは目にしただろうか。
どうか探さないで。
このまま私は裏切り者として恨み、終わって欲しい。
「はっきり切り捨てた方がいいと思うけどな。
あいつのためにも、お前のためにも」
「別に、これで…」
「同じ学校に同じクラスなんだろ?あいつは必ずお前と接触する。必ず裏があると思ってるだろう」
「…っ」
これから起こるかもしれないリスクを考え、口にする彼。
確かにその通りだ。
一週間ほど時間を開けるつもりとはいえ、瀬野が必ずしも私と接触をしないという確証もない。
「その場合、お前はどうする?
瀬野を突き放す覚悟はあるのか?」
意地の悪い笑みだった。
もしここで否定したとしても、彼からは逃げられないのだ。
彼はすぐに私を脅しの材料とするだろう。
それだと意味がないのだ。